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【専門家監修】海外法人設立の種類と手続きの流れを解説

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【専門家監修】海外法人設立の種類と手続きの流れを解説

近年、日本国内の市場縮小により、製造業をはじめとするあらゆる企業の間で注目を集めているのが事業の海外進出です。中でも、最も自由度が高い海外法人の設立ですが、進出先の法律や制度によってさまざまな規制が存在するため、申請時には国ごとに適切な対応をとる必要があります。

本記事では海外法人設立の種類や手続きの流れ、実際の進出先における国別のメリット・デメリットについて解説します。

はじめに

ここではまず、本記事における海外法人設立の概要について解説します。

海外法人設立とは?

海外法人設立とは、後述するように現地法人(子会社)や支店、駐在員事務所といったいくつかの形態によって、日本国内の事業を実際に海外現地へ進出する形で展開することです。

海外法人設立は、現地で直接ユーザーのニーズを把握することができる他、経営戦略を自社でコントロールすることができるのが利点といえます。しかし、コスト面や経営に伴う責任など、ある程度のリスクを覚悟しなくてはいけないため、設立には入念な準備が必要です。

海外法人設立の重要性

日本国内の人口減少により、あらゆる市場が縮小傾向にありますが、海外に目を向ければ無限ともいえる市場が広がっています。自社製品やサービスの分野によっては競合がいない、いわゆる「ブルーオーシャン」といえるような国もあり、国内では飽和した事業であっても、海外で成功するチャンスは十分にあるといえるでしょう。

また、世界には法人税が安い国も多いため、日本国内よりも多くの利益をあげられる可能性があります。

このように、企業の生き残りを模索するうえで海外法人設立は重要な選択肢であり、今後さらに注目を集めることが予想されます。

海外法人設立の種類

海外法人の設立は、「現地法人(子会社)」、「支店」、「駐在員事務所」の3つに大別され、それぞれにメリット・デメリットが存在します。

1. 現地法人(子会社)

現地法人とは、海外現地に子会社を設立することで、最も多い海外進出の形態です。進出国によっても違いがありますが、一般的に企業側の自由度が高いという特徴があります。一方で、コスト面などある程度のリスクに対する覚悟が必要です。

メリット

・日本国内よりも低い進出先現地の税率を受けられる
・本社で行っている事業だけではなく、新規事業が展開しやすい
・自社技術やノウハウの流出リスクが低い

デメリット

・本社とは別の法人という扱いになるため、現地法規で定められた会計や労務、税務といった書類を新たに作成する必要がある

2. 支店

日本企業の支店を海外に設立する形態です。支店が海外に存在するというだけで、国内支店と同じ扱いになります。

メリット

・収支は本社と合算になるため、支店に赤字が出た場合でも本社利益との合算が可能
・本社から製品や資材を仕入れる際には社内取引として扱うことができるため、経理作業が容易

デメリット

・利益に対しては日本の法人税が課せられるため、進出先の低い税率を受けられない
・進出先によっては海外支店が行う業種や事業内容に規制がある

3. 駐在員事務所

駐在員事務所は、事業進出先の市場調査や情報収集など、補助業務を行うために設立するもので、海外進出を検討する際の準備段階に活用される形態です。

メリット

・法人登記や従業員の雇用が不要

デメリット

・直接的な営業活動が禁止されている

海外法人設立の手続きの流れ

ここでは、海外法人設立の手続きを3つのステップに分けて解説します。

STEP1|準備

海外進出を検討する際、まずはあらゆるリスクに対応するため、事前に進出先について情報収集を行います。進出先の現地情報や外資規制などを確認したうえで、必要に応じて信頼できる現地パートナーを探すのも有効です。

また、1年目の事業計画を事前に作成しておくことが重要であり、ビジネス面以外にも登記手続きの書類作成など、さまざまな場面で活用することができます。

STEP2|登記手続き

事前準備が整ったら、登記手続きを行い海外法人を設立します。手続き方法は国によって若干異なりますが、社名予約後に定款(ていかん)の登録を行うのが一般的です。

登記手続きは進出先の法律や制度によって複雑になる場合も多く、時間や資金といったリソースには余裕を持って進めることをおすすめします。また、確実に実行するためには法人設立代行会社などへの相談も有効です。

STEP3|事後手続き

登記手続き後に事業を開始するため、いくつかの事後手続きを行います。

・銀行口座の開設
・税務関係の登録
・労働許可、就労ビザの取得

など、状況に応じてさまざまな手続きが必要であり、適切な現地専門家とつながるための優秀なエージェントを選定することが重要です。

海外法人設立における国別のメリット・デメリット

最後に、日本企業の進出先として上位を占めるシンガポールとドバイに関して、海外法人設立時のメリット・デメリットを解説します。

シンガポールに法人を設立する場合

世界の大手企業の大半が法人を設立しているシンガポールですが、税制優遇をはじめ、さまざまな利点があります。

メリット

・法人税や所得税などの税率が低い
・他国へのアクセスが良好のため、アジア各国のビジネスを統括することができる
・インフラ整備が世界トップクラス
・公用語が英語

デメリット

・市場が小さい
・オフィスや駐在員居住地の家賃、自動車の価格などが高額

ドバイに法人を設立する場合

ドバイは多様な人種が集まるUAEの首長国の1つです。日本と比較すると税制における優遇性が非常に高く、財政や人口、インフラといったあらゆる面で将来性に満ち溢れています。

メリット

・世界中へのアクセスに優れている
・法人税や所得税がかからない
・年齢や性別、人種などにとらわれないダイバーシティーでありながら安全な社会
・親日国

デメリット

・イスラム教に対する理解が不可欠
・現地国籍人の雇用義務がある

GSJ認定専門家

■ この記事の執筆者関西支部長・認定専門家 井上 佐知子

■ プロフィール概要 所属(肩書):司法書士事務所神戸リーガルパートナーズ 代表司法書士
専門領域:会社設立手続き
資格など:司法書士、一般社団法人神戸事業承継パートナーズ代表理事、JETRO神戸 外国企業進出水先案内人登録司法書士、兵庫県司法書士会元理事

■ プロフィール詳細 神戸に拠点を置き、英語・中国語での対応が可能な司法書士・行政書士事務所で代表を務める。海外の企業が日本に進出する際の登記手続き、在留許可申請、許認可申請などワンストップサービス提供している。兵庫県・神戸市の企業誘致担当部署など行政とつながりがあり、経済産業省の外郭団体であるJETRO(神戸、大阪)の登録司法書士として、外国企業が日本でビジネスを始める際に最初の一歩となる「水先案内相談」を担当する。