台湾はTSMCやUMCなどの半導体企業が有名である一方、豆花(トウファ)や小籠包(ショーロンポー)など、日本の一般消費者にとってもなじみのある食文化が有名です。また、2011年に東日本大震災が発生したときには台湾から200億円を超える義援金が届き、反対に2024年に台湾東部地震が発生したときには日本からおよそ1億円の義援金を送るなど、お互いに良い関係で支え合っているといえます。
両者は政治的・文化的交流だけでなく、台湾の半導体企業TSMCの熊本県進出を皮切りに、ビジネス面での結びつきも今後ますます強くなると考えられています。そこで、日本企業の台湾進出をおすすめする理由を解説します。
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台湾進出の魅力
文化的親和性が高い
日本と台湾の交流の歴史は古く、1895年から日本が終戦を迎える1945年まで台湾は日本の統治下にありました。この間、日本は台湾の衛生環境を劇的に改善し、社会インフラを整備するなど台湾発展の礎を作ったともいわれています。
このような背景から、台湾には親日家が多いとされています。勤勉に働くといった社会的価値観や、商習慣の中に人との縁を大切にする考え方があるのは日本と似ています。そのため、日本の製品やサービスは台湾の人々によく受け入れられています。その証拠に台湾のあらゆる場所で日本の商品が売られています。
地理的利便性
台湾は沖縄本島の南西、つまり石垣島や竹富島のやや西側に位置します。羽田空港から台湾(松山空港=台北)までは約3時間半、関西国際空港からだと約3時間のフライトです。そのため午前中の早い便に乗れば、午後には現地で会議に参加したり、取引先との商談ができたりします。
オンライン会議システムが一般的になった昨今ですが、大切な場面では直接顔を合わせて話したい場面もあるでしょう。社会的価値観や商習慣が似ているといっても、あくまでも外国である台湾であればなおのことです。そのような場合、半日程度でアクセスできるのは大きなメリットです。また、台湾新幹線が本島を南北に貫いており、北部の台北から南部の高雄まで約2時間で移動できます。
IT・ハイテク産業が盛ん
TSMCやUMCはファウンドリ(半導体前工程の製造受託)として世界的にも上位のシェアを誇る企業であり、特に日本のシャープを傘下に収める鴻海精密工業は、スマートフォンや薄型テレビなどの受託生産として有名です。台湾はIT・ハイテク産業が盛んですが、今日に至ったのは世界中のクライアントの要望に応えてきた、技術力と適応力の高さの結果であるともいえます。
市場成長性が高い
台湾は個人の投資家が比較的多い国です。台湾株式市場の70%近くが個人投資家といわれており、国民の半数以上が証券口座を持っているといわれています。また、新型コロナウイルスは私たちの生活だけでなく経済にも大打撃を与えましたが、そんな中で半導体産業はテレワークやオンライン会議の利用増を背景に成長しました(その後、在庫調整期に入る)。この影響もあってか、日本でいう日経平均株価のような指数である台湾の「加権指数」は、2020年初頭には約12,000でしたが、2022年初頭には約18,000と1.5倍になりました。このような株式市場で富を得た台湾人は少なくないはずです。
また、2024年10月版のIMF世界経済見通しでは、国民一人当たりの名目GDPでは日本(33,138ドル、38位)や韓国(34,165ドル、35位)を抜いて34位(34,432ドル)となっています。考え方によっては、日本人より台湾人のほうが購買力があるともいえるのです。
他東南アジアのマーケットへの足がかりになる
台湾には、国内だけでビジネスを行っている企業もあれば、盛んに海外に進出している企業もあります。そして、台湾企業の中には東南アジアと結びつきの強い企業も多くあるといわれています。そのため、台湾への進出をきっかけにその先の東南アジアへのつながりや販路先が見出せる可能性も十分にあり、台湾は日本企業にとって海外進出(特にアジア)の重要な進出先であるとも考えられます。
数字で見る進出状況
台湾に進出している企業は3,124社(2022年度7月時点)であり、中国への進出企業数(1万2,706社)より少ないものの、多くの企業が台湾へ進出しているといえます。また、台湾へ進出している企業のうち約50%が中国へも進出しており、アメリカ(同36%)と比べても進出先として重要視されている国であることがわかります。
台湾へ進出している企業の約40%が製造業で1,224社、その次に多いのが約30%を占める卸売業で918社でした。また、サービス業も383社と多く、他には小売業が187社、金融・保険業が161社と続いています。
特徴的なのは、いずれも半導体産業やIT産業が関係している点です。製造業では半導体用のエッチング装置やフッ素術加工装置を作る企業、卸売業では半導体産業向けの素材や装置を扱う企業が比較的多くなっています。また、サービス業では受託開発ソフトウェアの企業やパッケージソフトウェアの企業が多くなっています。
台湾に進出している著名な日本企業
ここで台湾に進出している著名な日本企業5社(製造業3社、卸売業2社)を紹介します。
製造業
- 国内法人名:東京エレクトロン株式会社
事業内容:半導体製造装置製造(現像、エッチング、洗浄装置など)
現地法人名:Tokyo Electron Taiwan Ltd. - 国内法人名:株式会社SCREENホールディングス
事業内容:半導体製造装置製造(洗浄、検査、後工程露光装置など)
現地法人名:SCREEN SPE Taiwan Co.,Ltd. - 国内法人名:信越化学株式会社
事業内容:シリコンウエハ製造など
現地法人名:Shin-Etsu Polymer Taiwan Co.,Ltd. など計6社
卸売業
- 国内法人名:サンワテクノス株式会社
事業内容:産業用エレクトロニクス・メカトロニクス関連の装置・機器・部品販売
現地法人名:SUN-WA TECHNOS(TAIWAN)CO.,LTD など計3社 - 国内法人名:日本電計株式会社
事業内容:電子計測器・各種システム機器・電子部品の販売など
現地法人名:TAIWAN DENKEI SOLUTION CO.,LTD
今後の予測
名目GDPの高い台湾は魅力的なマーケットであり、今後も進出する企業が増えていくでしょう。しかし、台湾は中国との軍事衝突(台湾有事)のリスクを抱えており、進出を検討する際はこのような地政学リスクを考慮せざるを得ません。
また、台湾の人口動態の特徴として少子高齢化の進行が速く、日本を上回るスピードといわれています。しかし、少子高齢化が進むということはその市場に少子高齢化ビジネスのチャンスがあるともいえますので、台湾の少子高齢化マーケットに向けて商品やサービスの展開を検討してみるのもよいでしょう。
台湾進出(華僑ビジネス)を成功させるための心構え
まずは相手の文化や歴史を学ぶ
台湾ビジネスに限りませんが、ビジネスといってもあくまでも「人対人」です。まずは相手を知ることから始めましょう。相手のことを知れば、相手の言動を理解しやすくなります。同時に相手の国の歴史や文化、商習慣も同時に学ぶとよいでしょう。人間は、自分のことを知ろうとしてくれている人に悪い印象は抱きません。もし、そこに難易度を感じるようであれば、まずはその違いを理解しているコンサル会社に依頼するのも一つの選択肢ですが、少しずつでも努力は必要です。
台湾では、人脈が有効にはたらく場合があります。同じ契約内容を提案するにしても、ビジネス相手と共通の知り合いがいれば、話がうまく進む場合もあるのです。ただし、これはあくまでもプラスαの要素で、台湾人はシビアにビジネスの条件を確認します。また、傾向として契約する両者がWin-Winの関係になることを気にする人も多いようです。
反対に注意しなければならないのがメンツです。契約価格を低くしたいと考えても折り合いがつかないこともあるでしょう。しかし、相手のメンツを潰すような言動はNGです。また、反対に場合によっては「私のメンツのために……」と契約を結べることもあるようです。しかし、これは台湾人が、あなたを同等のビジネスパートナーと認めてくれている場合に限るでしょう。
言葉の壁は問題ではない
「海外」というと苦手意識を感じる日本人は多いような気がします。しかし、言葉はあくまで意思を伝えるツールに過ぎません。大切なのはツールを使いこなすことよりも、まずは「相手を知ろうとする気持ち」がとても大切です。あなたが誠意を持って相手を知ろうとする態度や向き合い方は「温度」として相手に伝わり、相手も逆にあなたのことを誠意を持って知ろうとしてくれます。言葉が話せないからといってコミュニケーションを疎かにしたり、通訳の方に任せっきりにしたりするのではなく、相手の目を見て身振り手振り、気持ちを込めてコミュニケーションを取ってください。相手はしっかり見て観察しています。
海外の商習慣を学ぶ
台湾と日本とは長い歴史的な関係性があるので、親日な台湾の方々の歓迎を受けたり、台湾現地でもどこか日本のような雰囲気を感じたりするなど、日本にとても近い国だと感じる日本人も多いかと思います。しかし、異なる文化や商習慣は必ず存在します。そのため、それを理解しないまま日本の感覚でビジネスを進めると、軋轢や誤解を生む原因にもなり得る場合がありますので要注意です。
例えば、スケジュール管理や、商談・交渉のやり方など、個人によっても差がありますが、日本国内でのビジネス商習慣と同じような対応で進めていくと、最終的にお互いに同意したのだと思っていたことが実は相手に正確に伝わっていなかったり、思い違いが発生したりと最終的に成約につながらない恐れもありますので、時として認識の違いがあることも理解しておきましょう。
現地へ足を運びリアルを学ぶ
ネットやメディアの普及している中、今やどこでも基本的な情報を仕入れることができますが、そんな表面的な情報のみだけでは正確な情報は入ってこない場合があります。可能ならばぜひ一度は現地へ足を運び、実際に目で見て、現地の空気を肌で感じてください。現地へ行って初めてわかるマーケットの実情など得るものが数多くあるはずです。もちろん、通訳が必要な場合は依頼されてもいいでしょう。
事前調査も大切ですが、ビジネスを始める相手国への敬意の意を表すためにも、必ず一度は現地に足を運んでみてください。「訪れたことがある」と言われたら、相手も実際の自国を少しは理解してくれているのだと嬉しい表情を見せてくれるものです。
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