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FDA対応(医療品、化粧品、食品など分野別に解説)

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FDA対応(医療品、化粧品、食品など分野別に解説)

アメリカに製品を輸出する際、食品や医薬品など様々な分野で必要になるのがFDAによる認証です。分野によって取得方法や必要書類が異なるため、必要な手続きを理解したうえで適切な対応をとらなくてはいけません。

今回は、アメリカでのビジネス展開において避けて通ることができないFDAについて、手続きの内容、取得におけるポイントなど、分野別に詳しく解説していきます。

FDAとは

「Food and Drug Administration(アメリカ食品医薬品局)」のことで、日本でいうところの厚生労働省にあたるアメリカの行政機関です。

FDAは、アメリカ国内のエンドユーザーが触れるあらゆる製品に対して、安全性や有効性を確保することを目的として設置されています。

大きく分けると「医薬品」「化粧品」「飲料、食品」「医療機器」の4つの分野が存在し、定められた申請を行ったうえで承認を得る必要があります。

FDAが定める内容に反した製品を輸出した場合、警告書の送付や製品の差し押さえ、活動禁止といった罰則を受けることになり、刑事告訴によって懲役刑に科されるケースもあります。

従って、自社製品がFDAによる規制に該当するかどうか、該当する場合はどの分類に当てはまるかを把握し、認証取得の手順や注意事項を確認しておく必要があります。

医薬品のFDA対応

FDA認証における医薬品には、処方薬と市販薬のほか、医療現場で用いられる様々な薬品や、我々にとって医薬品という認識がない一部の化粧品も含まれています。

どのような製品が対象となるのか

医薬品は「人や動物の疾病の診断、治療、予防を行うために与える薬品」と定義されています。処方薬や市販薬のほかにも、ワクチン、血液、血液製剤、遺伝子治療製品などが医薬品に含まれます。

また、薬用日焼け止めや、薬用歯みがき剤、薬用シャンプー、育毛剤などは、日本では化粧品として認識されていますが、薬としての効果を明記しているため、分類としては医薬品扱いとなります。

FDA承認のためにやらなければならないこと

医薬品は飲料・食品と同様に、生産施設や、製造、加工、保管といった品質情報をFDAに登録申請することで認証を受けます。

また、医薬品は生命、健康に直接影響を及ぼすため、臨床試験データに信頼性があるか、整合性がとれているかどうかが重要な審査項目となります。

FDAの承認を確実に得るため、pre-submissionという事前申請の制度を活用するのが有用です。FDAから早期にフィードバックを受けることで、その後のFDAへの申請に活かすことができます。

注意点や認証取得のポイン

ここでは、医薬品の認証取得における注意点やポイントを解説していきます。

医薬品の分類による違い

医薬品は医師が処方する処方薬と、薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入が可能な市販薬(OTC医薬品)とに分類されます。

処方薬とOTC医薬品とでは、FDA承認を得るための手続きや期間が異なるため、注意が必要です。また、日本での臨床試験結果を流用できる場合もあり、手続き準備や審査期間の短縮を図ることができます。

現地代理人の選任

医薬品の承認には、現地における代理人選任が必要となる場合があり、有利にビジネスを展開するうえでも有能な人材を確保することが重要です。

化粧品のFDA対応

化粧品は用途や効果、さらに配合成分によってもいくつかの種類に分類されます。日本での認識とは違い「医薬品」としてFDA認証が必要となる製品もあり、手続きの違いなど注意が必要です。

どのような製品が対象となるのか

FDAでは化粧品を「一般化粧品」と呼び、容器に「薬用」と記載のある化粧品は次項でも解説するように「医薬品」と定めています。

化粧品は、大きく分けると以下の6つに分類されます。入浴剤や歯みがき剤など、日本では化粧品という認識が薄い製品も含まれていますが、アメリカで販売を行う際にはFDAに準拠していることが求められます。

  • スキンケア化粧品(洗顔料、メイク落とし、化粧水、美容液など)
  • メイクアップ化粧品(口紅、ファンデーション、アイシャドーなど)
  • ヘアケア化粧品(シャンプー、リンス、トリートメント、整髪剤など)
  • ボディケア化粧品(ボディシャンプー、ハンドソープ、入浴剤など)
  • 歯みがき剤
  • フレグランス化粧品(香水、コロンなど)

FDA承認のためにやらなければならないこと

化粧品のFDA認証は、前項でも解説したとおりその化粧品が一般化粧品と薬用化粧品のどちらに分類されるかによって対応が分かれます。

一般化粧品の場合、FDA登録や認証取得は必須ではありませんが、病気の診断や治療などに用いる薬用化粧品は医薬品としてFDA認証が必要です。

化粧品をアメリカに輸出する際には、まずその商品がどのカテゴリに分類されるか正しく認識することが重要です。

また、薬用化粧品はもちろん、一般化粧品であっても化粧品は使用意図に対しての安全性を担保しなくてはならないため、成分チェックやラベル表示など、正しく英語化された書類を用意する必要があります。

注意点や認証取得のポイント

前項で解説したように、化粧品のFDA認証は、一般化粧品と薬用化粧品とで大きく異なります。ここでは認証取得における注意点やポイントをご紹介します。

生産施設の登録

薬用化粧品のFDA認証においては、医薬品や食品と同様に、生産施設の登録が必要となります。

原材料の確認

化粧品は原材料の成分表をもとに、現地で規制対象になっているかどうかを判断します。「薬用」と記載のある薬用化粧品はFDAによる規制対象であり、前述した生産施設の登録など、様々な認証が必要です。

なお、化粧品の成分表示については、INCIと呼ばれる国際的表示名称を使用します。そのため、INCIに記載のない成分を使用している場合には認証が下りない場合もあるので注意が必要です。

ラベル表示

ラベル表示には、内容量の表示方法や単位、文字の大きさなど様々な規制があり、消費者の誤解を生まないために、専門家によって厳しいチェックが行われます。

従って、日本国内の製品ラベルをそのまま英語化するだけでは、認証を取得することは困難です。

飲料・食品のFDA対応

FDAの中で最も申請が多いのが飲料・食品であり、身近な製品も多数含まれています。

どのような製品が対象となるのか

FDAが「飲料・食品」と定義する商品は以下のようなものです。身の回りのほとんどの食品がFDAに指定されているため、アメリカへ食品を輸出する際にはほぼ全てのケースでFDAによる認証が必要となります。

  • 魚、海鮮食品
  • 果物、野菜
  • 食品または食品成分として使用される未加工農産品
  • 乳製品、卵
  • パン製品、スナック菓子、砂糖を使用した菓子、ガム
  • 飼料、ペットフード
  • 食品、飼料添加物
  • 栄養補助食品および食品成分
  • 乳児用調整乳
  • 飲料(アルコール飲料を含む)
  • 缶詰食品
  • 生きた食用動物
  • タバコ製品

FDA承認のためにやらなければならないこと

飲料・食品におけるFDA認証取得のために、日本企業がやるべきことは以下の4つです。

  • 生産施設の登録
  • 米国代理人の登録
  • 商品ラベルの英語化
  • 事前通知(数量、生産施設、送り状番号など)

注意点や認証取得のポイント

前項では飲料・食品の認証取得に必要な項目について解説しましたが、ここではそれを踏まえ、具体的な注意点や認証取得に向けたポイントをご紹介します。

生産施設の登録

飲料・食品のFDA認証においては、医薬品や薬用化粧品と同様に、製造、加工、包装、保管など、すべての生産施設の登録を行います。

原材料の確認

飲料・食品は原材料の成分表をもとに、現地で規制対象になっているかどうかを判断します。FDAで禁止されている成分が含まれていないか、添加物や着色料などが基準を満たしているか確認が必要です。

ラベル表示

飲料・食品のラベル表示は、FDAが定める表示方法や単位、文字サイズによって栄養分析の結果が明記されていなくてはなりません。以下の5つの項目において、FDA規則に準ずるラベル表示が必要です。

  • 食品名
  • 食品表示必要条件
  • 正味内容量表記
  • 成分リスト
  • 強調表記

医療機器のFDA対応

医療機器と一口に言っても、包帯や絆創膏など我々の身近なところに存在するものから、人工弁や人工臓器など高度な医療現場に使用されるものまで、様々な製品が存在しています。

どのような製品が対象となるのか

FDAでは、医療機器をリスクレベルによってクラスI〜クラスIIIに分類しており、それぞれ以下のような製品が含まれています。

日本では医療機器に該当しない製品が、FDAにおいては医療機器として扱われることもあるため、申請の際はその製品がどのカテゴリー、クラスに分類されるか正しい認識が必要です。先ほど医薬品で述べた、pre-submissionという事前申請の制度を活用するのがここでも有用です。

クラスI

包帯、絆創膏、デンタルフロス、サングラス、歯ブラシなど、欠陥や不具合が生じても、患者に大きな影響を与えない医療機器のこと。

クラスII

妊娠診断キット、温度計、電動式車椅子、輸液ポンプなど、クラスIよりも高いリスクを要するもので、欠陥や不具合が生じると患者に負傷などの影響を与える可能性がある医療機器のこと。

クラスIII

人工心臓弁、移植用心臓弁など、人体へのリスクが大きく、管理にも高度な技術が必要なもの。欠陥や不具合が生じると、患者に深刻な障害を与え、生命の危機にも関わる医療機器のこと。

FDA承認のためにやらなければならないこと

医療機器のFDA取得のためには、まず前項で解説した製品のクラス分類において、自社製品がどこに属しているか把握する必要があります。

医療機器のFDA取得の際に必要となる申請には、510k(市販前届出 Premarket Notification)やPMA(市販前承認 Premarket Approval)などがあります。各クラスに準じた申請内容を確認したうえで、必要な登録を行っていくのが良いでしょう。

クラスI

使用に伴うリスクが低いため、510k(市販前届出 Premarket Notification)の申請は不要です。品質管理(QSR)や製造基準(cGMP)に準拠した製品であることが要求されます。

クラスII

クラスIよりも使用リスクが高いため、品質管理(QSR)や製造基準(cGMP)への準拠に加え、510k(市販前届出 Premarket Notification)の申請が必要です。

クラスIII

最もリスクレベルが高いクラスIIIでは、PMA(市販前承認 Premarket Approval)が必要となります。患者への影響が非常に大きいため、安全性や有効性が保証されていることをFDAに示す必要があります。

注意点や認証取得のポイント

ここでは医療機器の認証取得に関して、注意点やポイントについて解説していきます。

医療機器のクラス分類

医療機器は、患者や機器使用者へのリスクに応じてクラスI〜クラスIIIに製品が分類されており、当てはまるクラスによって承認を得るための手続きや期間が異なります。

なお、医薬品と同様に、日本での試験結果を流用できる場合があり、手続きにかかる時間やその後の審査期間を短縮することができます。

規格取得

アメリカに医療機器を輸出する際には、生産者としてISO13485など、高い安全基準を満たした品質マネジメント規格を取得することが必要です。

現地代理人

医療機器の承認を受ける際には、医薬品同様、現地における代理人選任が必要な場合があります。そのため有能な人材を確保することが、よりスムーズなビジネス展開へとつながっていきます。

GSJ認定専門家

■ この記事の執筆者認定専⾨家 中村 優紀

■ プロフィール概要 所属(肩書):中村法律事務所 代表弁護⼠
専門領域:法務コンサルタント
資格など:弁護士(日本・ニューヨーク州)、独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、国際弁護士ネットワークWILL日本代表、三井不動産株式会社ワークスタイリング テーマエキスパート(海外進出サポート)、日弁連中小企業海外展開支援事業担当弁護士

■ プロフィール詳細 仙台市生まれの国際弁護士。国際コンプライアンス案件を専門的に扱う矢吹法律事務所、米国大手法律事務所Gibson, Dunn & Crutcher LLPサンフランシスコオフィスでの執務後、2018年に中村法律事務所を1人で独立開業。3年半で総勢14名の組織に拡大。12年間の弁護士経験をもとに、日系企業の海外進出を数多くサポートしている。海外への輸出に係る現地法規制調査、万博出展に係る表示規制アドバイス、海外販売代理店契約、クロスボーダーM&A、海外現地法人設立といった取引案件の他、海外企業に対する債権回収、JV解消に係る株式買取交渉といった紛争案件も代理。65か国260名以上の弁護士が在籍する国際弁護士ネットワークWILLに属し、グローバルで法務ニーズに対応している。2022年1月、マンハッタンにてニューヨークオフィスを設立。