昨今の日本経済を見ると、海外販路を視野に入れる中小企業もたくさんあるのではないでしょうか。その具体的な営業ツールとして、動画マニュアルが有効なのをご存知ですか?
言葉が多い説明書より視覚的に理解しやすい動画のほうが、海外の顧客に対しては非常に効果的です。
今回は、動画マニュアルの作り方について紹介していきます。
Contents
海外販路開拓で動画マニュアルを作成するメリット
大きく3つのメリットについて触れていきます。
- 映像によって理解しやすい
紙媒体だと読み手の解釈に差が出やすいですが、映像は目と耳から情報を得ることが可能になります。映像の情報量というのは、文字の情報量の5000倍あると言われています。 - そのまま販売店が営業ツールとして使用できる
自社が販売店へ説明するためのマニュアルは、そのまま販売店がユーザーへ説明するためのマニュアルにもなるのです。販売店側としてはとても助かるツールなのではないでしょうか。 - イラストでの説明書を作成するよりもコストが安い
動画と紙のマニュアルをそれぞれ作成した経験がありますが、動画マニュアルは紙では表現できない部分まで伝わり好評でした。また、動画マニュアルは紙マニュアルに比べて、作成コストが圧倒的に削減できます。
最近は動画編集を簡単に行う方法がたくさんありますが、動画ツールは今後も更に効率化が上がっていくことでしょう。
海外向けの動画マニュアルの種類
動画化するコンテンツとしては次の4種類をおすすめします。一つ一つ細かく紹介していきます。
製品の取扱い方法
例えば家電製品を買った時に、分厚い取扱説明書が付いてくると思います。その全てを読む人はほぼいないと思いますが、QRコードが付いていて読み込むことで動画説明を見られたらとても良いですよね。
これは工業製品であっても全く同じだと考えられます。
まずは取扱説明への抵抗が和らぎ、情報をしっかりと掴んでくれる可能性が高まります。そうすることでユーザーは簡単なミスや間違いなどを、未然に防ぐことができると考えられます。
英語で「このネジをここにはめ込んでください」と文字で書いてあるだけでなく、実際にネジを締めている動画を見られるのです。そうすることで、もし英語が分からなかったとしても、技術者であればすぐに状況を把握してもらえるでしょう。
間違った使い方をされてしまうと、商品の能力が発揮されないまま悪い商品だと勘違いされてしまう可能性があります。
メンテナンス方法
メンテナンスというのは非常に重要な行為で、これを疎かにすると商品を長く使えなくなってしまいます。故障しても直れば良いのですが、一番の問題はメーカーとユーザーのどちらに責任があるのかという議論が出てくることです。
特に初期段階で状況がよく分からないと、現地まで足を運ばなければいけなくなってしまいます。ユーザーのメンテナンス不具合、クライアントの使い方の間違いなどで呼び出されるケースも少なくはありません。
こういう問題を解決する方法を考えると、やはりメンテナンス方法をユーザーにしっかりと伝えることにつきます。
技術系の会社にありがちですが「こっちは説明をしたので、把握していないユーザーが悪い」と解釈するパターンが割と多く見受けられます。しかし問題が発生した以上は対処が必要となりますので、誰が見ても分かるようなマニュアルが必要とされています。
紙媒体のものを用意すると立体的にものが見えないことから、どうしても勘違いが起こりやすくなります。また、第二言語の場合には、英語が母国語ではないケースがあります。するとどうしても間違いや理解ができないといった問題が発生します。日本人だって日本語で書いてあるものをたくさん勘違いするのです、海外なら尚更と考えるべきでしょう。
メンテナンスについて動画マニュアルで分かりやすく紹介することは、ユーザーだけでなくメーカーにとっても非常に重要なことだと考えられます。
特注品こそ動画対応
特注品を作るとなると、その商品はこの世でたった1つだけのものになります。
中小企業というのは対応力があればあるほど、大企業に勝つことができます。しかしユーザーへ納品してしまうと、商品情報を再入手することは簡単では無くなってしまいます。海外への納品なら尚更です。
この特注品こそしっかりと動画で記録を残して、販売店に見せられるような状態にしておくことが重要です。そうすることで販売店の特注品への対応力が上がり、似たような案件を受けた時には参考情報となるわけです。
過去の経験でもそうですが、自分が一緒に営業している時に「これは特注品で対応できるよ」「こういうことをやったことがあります」と営業の幅を広げられました。しかし、販売店の単独営業では既製品だけしか売れず、競合との差別化が出来ないという事態に陥ってしまいます。
やはり特注品でどのような事例があるのか、動画を準備しておくと販売店の動きが変わってくるでしょう。具体的な例として、動画を見た販売店の担当からこのような連絡がきました。
「この動画にある仕様ですが、うちのユーザーに使えそうなんです。でも実際のところはどうなんでしょうか?」
このようにかなり踏み込んだ相談が来るようになったのです。
特注品の動画は売上に大きな影響を与えますので、ぜひとも撮影の習慣に付けていきましょう。
販売店教育を動画で
新しい販売店と契約をすると教育をしなくてはいけませんが、その労力は大変で丸一日話し続けて終われば良い方です。しかし、1回だけでは理解されず、その後も同じ説明をしました。それをたくさんの販売店でやるとあまりにも非効率です。
そこで商品のデモンストレーションの方法や使い方について、具体的に動画撮影することにしました。現地へ訪問する前に動画を見てもらい、質問をまとめてもらうことで相当なコスト削減ができました。
1つの質問に対してメールや英語で対応すると、1時間なんてすぐに過ぎ去ってしまいます。問い合わせ件数が多いものが増えてきた場合は、それを更にまとめることでQ&A方式の動画を作ることができます。こういうことを繰り返していくことで、ムダがなくなりマニュアルの中身も濃くなっていきます。
また、海外では国によって転職が多く、担当者が頻繁に変わるケースもあります。
その度に出向いて新たに教育をするのは大変ですが、動画マニュアルを見てもらうことで全体の7、8割を理解してもらえると負担軽減が大きいです。
海外向けの動画マニュアルの例
ここではマニュアルの作り方の参考として、具体的なものを紹介していきます。
字幕と音声について
1、文章を翻訳して字幕を入れる
現代の日本では、外国人労働者が増加傾向にあります。そういう意味では日本で仕事をしていたとしても、必要なニーズとなってくるでしょう。
動画の音を自動テキスト変換できるソフトが、今は色々と出回っています。まずは音声を日本語でテキスト化していきましょう。次に翻訳ソフトでテキスト化した日本語字幕を外国語にしていきます。
テキスト変換ソフトも翻訳ソフトも、あるシステム、ルールに乗っ取って変換されます。私の経験では、ソフトが変換しやすくなるように、こちらが合わせていくことが大切です。「おれって犬がめちゃくちゃ好きなんだぜ!」と「私は犬が大好きです」ではどちらが正確に翻訳されるでしょうか?
それはもちろん基礎に習ったような、後者の文章が正確に翻訳を行ってくれます。このようにコツを覚えると、ソフトの使い勝手もかなり早くなっていきます。
どうしても難しい場合は、有料ですが翻訳会社に依頼をするという選択肢もあります。
2、字幕+音声を入れる
これはまず外国語の音声データを取得する必要があります。その方法としては下記のようなものが考えられます。
・外国語が話せる人にアフレコしてもらう
・サイトの読み上げ機能や翻訳ソフトを活用する
・翻訳会社にデータを作成してもらう(有料)
今回は費用も特殊な人材も必要としない、パソコンツールでのやり方を紹介します。
Windowsには初期ソフトとして「Windowsフォト」が用意されています。またMacには「iMovie」というアプリが用意されています。
どちらも簡単に扱えますので、是非とも挑戦してみてください。
取扱い動画マニュアルの例
こちらは住友電気工業株式会社様の海外向け製品紹介動画となっています。
撮影している動画自体は非常にシンプルで、誰でも撮影できるレベルだと実感できます。それでいて取り扱っている製品と、その使用感が短時間でしっかりと伝わるような動画ではないでしょうか。
クローズアップしたい製品や、構成、内容などを検討して、是非とも動画マニュアル作成にチャレンジしてみましょう。
まとめ
動画マニュアルを作成することで、海外の販売店や顧客はもちろん、関係者全員がより深い理解を得られるでしょう。英文化ができれば他の国の言語に変換する事は難しくありませんので、効率よく展開していけるでしょう。
ぜひマニュアルを動画で作成し、海外販路拡大のツールとして活用してみてはいかがでしょうか。