海外への販路開拓の方法としては、まずは進出対象国のマーケットを調査し、その次に現地展開していくための販売代理店を探すというのが一般的な流れです。
本記事では、販売店と代理店のそれぞれの特徴と、その探し方や選び方を解説します。
Contents
販売店と代理店の違い
日本の商社やメーカーが海外で販売を行おうとするとき、海外の商社、または現地法人を設立して契約を結びます。
その時に締結される契約には、主に「代理店契約」と「販売店契約」の2つがあります。その2つの違いと特徴を説明していきます。
販売店とは
販売店(Distributor)は、「売り切り・買い切り」の契約関係で、メーカーの商品を販売店が一度買い取り、在庫として保有してから客先へ販売します。
そのため、販売店は仕入金額から販売金額を引いた差額を利益として得ることができますが、在庫のリスクや代金回収のリスクも同時に負うことになります。
そのような独立した関係で結ぶ契約が「販売店契約」です。
代理店とは
代理店(Agent)は、メーカーの商品を代理的に紹介・営業する役割を担います。代理店自体は客先と売買契約は結ばず、それはメーカーと客先で直接結ぶことになります。
代理店の利益は販売時の手数料で、代理店は商品の仕入れや売買をしないため、在庫リスクや代金回収のリスクは生じません。
業界や商品によって、代理店や販売店の利益率は異なりますが、一般的には販売店の方が大きなリスクを負うため、利益率は高く設定されるケースが多いようです。
売れる代理店・販売店を探す方法
次に、代理店や販売店の探し方・選び方を解説します。進出対象国には何社も契約の対象になりうる会社が存在すると思いますが、次の5つの基準を持って選べば大きな失敗はなくなるでしょう。
具体的な理想像や基準を作る
海外の代理店・販売店を探す前にまず行うべきことは「どんな代理店・販売店が自社とって理想なのか」または「どのような代理店・販売店だったら契約すべきか」という基準を具体的にリストアップすることです。
例えば、次のような項目について基準を決めることをおすすめします。
- 自社の製品とクロスセル可能な商品を持っているか
- どんなお客様を抱えているか
- どんな体制の会社なのか
- 会社の規模はどのくらいか
- 経営者はどんな考え方を持っているか
- 会社の長期計画はどういうものか
基準を事前に設定しないと、商談時の雰囲気や好き嫌いが契約の基準になってしまいます。「話してみたら印象がよかったからこの会社と契約しよう」という方向で進むのは、よく陥りがちな失敗パターンです。
しかし、明確な基準があれば、印象や感情だけでは判断せずに一歩立ち止まって検討するタイミングが生まれます。非常にシンプルですが、まずは自社にとってどんな代理店・販売店が理想的なのか、その基準を具体的に考えてみましょう。
自社の有力な顧客となりうる既存顧客を抱えているか
2つ目はその代理店・販売店が自社の有力な顧客となりうる既存客を保有しているか、を確認しましょう。
どんな代理店・販売店と契約するにしても、自社の一番のターゲットの顧客と既に取引をしてなければ、なかなか顧客にたどり着くことはできません。
代理店や販売店の役割は、本来自分たちが直接営業をしたいが、海外という物理的な距離があるため、自社の代わりに営業や販売をしてもらうことにあります。
その役割があるにも関わらず、自社が狙いたい顧客を既存顧客として保有していなければ、自社の代わりの役割が果たせず、契約の意味もなくなってしまいます。
そのため、自社の理想的な顧客像をまずは明確にし、代理店・販売店がその顧客を既存客としている、つまり常時商品を販売しているという状態にあるということが非常に重要なポイントになります。
自社製品と補完関係にある商材を扱っているか
3つ目は検討している代理店・販売店が、自社の商品と補完関係にあるような商品をラインナップとして持っているか、を確認しましょう。
補完関係というのは、自社の商品とその商品の両方が揃うことによって相乗効果がもたらされるような関係のことを指します。
ある製品の部品を例に考えてみます。顧客が作りたい製品Aを製造するためには、代理店・販売店が販売する部品Bを必要とします。自社の部品Cも同じ製品Aの部品として活用できるとき、代理店・販売店としてはBとCの商品をまとめて顧客に提案することができます。
これは補完関係があるということができます。
他の事例で言えば、実際にあった例ですが、デスクトップPCなどの電機製品の検査に使う検査機器を扱う会社がありました。その会社様は海外で販売されているある検査機器と一緒にその自社製品が使用されると、検査工程がかなり削減されることがわかり、その海外の検査機器を扱う代理店・販売店を探して契約交渉をしたことが過去にあります。
他にも補完関係にある製品はよく探せば見つかることが多くありますので、ぜひ諦めずに探していただければと思います。
経営者が自社製品に強い関心を示しているか
4つ目は、その代理店・販売店の経営者が自社の商品に関心を持ってくれているか、を確認します。私が実際に代理店・販売店と交渉するときは、非常にこの点を重要視しています。
例えば中小企業の製品でブランドがない製品があった場合、なぜ代理店・販売店がその製品を販売してくれるのでしょうか。
ブランドがないということは、売れる確証もなく、大手メーカーでなければ強力な販売支援が得られないということは代理店・販売店側もよく分かっているはずです。
それにも関わらず販売してくれる多くの理由は、その経営者が当社の製品を扱うことによって、単に販売利益以上のメリットやベネフィットを感じているからです。
そのため、代理店・販売店を選ぶ基準として、その経営者が自社の製品を売りたいと本当に思っているかが非常に重要になってきます。経営者が当社製品を扱うことに対して高い関心を持っているのか、よく観察をしながら交渉を進めると良い結果が得られるでしょう。
定期的にセミナーを開催しているか
最後の5つ目は、その代理店・販売店が定期的にセミナーを開催しているか、を確認しましょう。
セミナーであって展示会ではない理由としては、まずセミナーと展示会の違いを理解する必要があります。展示会は、特定の業界のイベントに出店をすることで、その業界に関係する人が多く訪問してきますが、それはあくまで待ちの姿勢です。
一方で、セミナーの特性としては、主催者側が主体的に参加者を選ぶことができるため、よりテーマを専門的に絞って実施することができます。そのため、より相手の課題に対して具体的な提案ができ、より成果につながりやすいということを、私自身も実感しています。
そのため、実際に代理店・販売店と取引を始めようとするときには「まず1度セミナーをやってみませんか」という提案をするようにしています。
例えば契約をする前に「まず一緒にセミナーを開催してテストマーケティングをして、その結果に応じて契約を正式に進めましょう。そのセミナーで売れたものはもちろん通常契約時と同じように利益を取っていただいて構いません」というような覚書を交わし、セミナーを行うというやり方をよくします。
セミナーをすることで、必ずその代理店・販売店の有力な顧客を最低でも2~3社は連れてきてくれます。そうすることで実力や顧客との関係性がよくわかります。そして初めて売れるかどうかという判断が付くのです。
とはいうものの、その代理店・販売店が普段からセミナーを行っていなければ、なかなか集客もうまくいきません。そこで、私の経験値として、自社で定期的にセミナーを開催しているかどうかを1つの基準にさせていただきました。
まとめ
今回ご紹介した5つの基準について、1つ1つはそれほど難しいことではありません。非常にシンプルな方法ですが、この基準を持つだけで成果は大きく変わってきます。
代理店・販売店は、1度契約をしてしまうと簡単に解除はできないケースが多いです。例えば契約をした会社に対して紳士的ではない方法で契約解除をしてしまうと、その業界全体であなたの会社のイメージが悪くなってしまうということがよくあります。
特に工業系のニッチな業界は世間が狭いこともあり、海外では頻繁に転職をするため、その代理店・販売店にいた人が別の会社に異動したときに、そこで悪いイメージを共有されてしまうのです。
だからこそ代理店・販売店は慎重に選んでいく必要があります。
今回紹介しましたこの5つの基準。これを最低限守れば大きな失敗をすることはありません。ぜひ参考にしていただき、海外であなたの商品をたくさん売ってくれる代理店・販売店をみつけましょう。